親族内承継の注意点とは
事業承継におけるファミリー・ダイナミクス
社会を構成する要素としては、国家をはじめ、地域、企業、学校、家族などが挙げられます。
このなかで最小単位である家族は、非常に私的で閉鎖的な組織であり、損得計算だけではない感情による結びつきが強い団体です。そのため、事業承継という金銭的な話になると、これまでの結びつきの構造が変化することがあります。
ファミリー・ダイナミクスという言葉があります。これは家族間の相互作用や関係性を指す言葉です。一般的に、家族は血縁関係でつながっており、経営者と従業員のように金銭的なつながりはありません。ただし、経営者とその家族が一緒に事業を経営している場合、家族内のコミュニケーションや信頼関係、役割分担などは普通の家族と異なり、経済的な結びつきという側面も発生します。具体的には、愛情の結びつきが強い家族が協力することで、業績が良くなったり、あるいは確執や対立が経営に悪影響を与えたりします。
家族は閉鎖的な団体です。閉鎖的というのは第三者の目が届きにくく、介入しにくいということです。ところが、事業承継は会社の役員、従業員、取引先、株主など家族以外の多くの人々に影響を与えるプロセスです。
遺産相続という人の死を連想させるデリケートな側面も出てきます。家族間の愛憎劇に発展する要素がふんだんに盛り込まれていると言ってもよいでしょう。専門的な相談は家族外に視点を向ける
親族であっても、事業承継に必要な専門性を持っているとは限りません。むしろ財務や税法の知識を持っていない場合が多いと想像できます。
そのため、事業継承においては、家族外の専門家やアドバイザーを招き入れることがポイントです。社会の目線から事業を見ることができるようになり、ファミリー・ダイナミクスのバランスを取ることができます。また、合意内容を口約束ではなく、契約書など文書化することも重要です。契約書を書くのは、親族間では気が引けるものです。その点、外部アドバイザーはあくまでも第三者の公平な立ち位置なので、バイアスのかからない契約書を書くことができます。
内外の関係者から受け入れられやすいメリットも
親族内承継は他の承継方法と比べて、内外の関係者から心情的に受け入れられやすいこともメリットです。後継者を早いうちに決定することにより、ある程度の期間にわたっての準備が可能であることや、相続により財産や株式を後継者に丸ごと移転できるため、所有と経営の一体的な承継ができるといったメリットもあります。
円滑な親族内承継を実現するためにはトラブルが起こる前に、早めに外部のアドバイザーやコンサルタントに相談しておくことが大切です。

経営者が今現在行っている事業には「伝統」があります。その伝統的な商品とかサービス、技術に対して、イノベーションを加えることで今の時流に合ったものになり、価値が変わるのではないか。私はそういう思いがあり、事業承継問題に取り組んでいます。
息子さん娘さんに会社を継がせたいと思っていても、気軽に相談する相手がいないという経営者様は多いのではないでしょうか。相談相手を見極め、相談内容を壁打ちすることで考えがまとまる方もいらっしゃいます。ぜひお気軽にご相談ください。