事業承継の補助金や税制
事業承継・引き継ぎ補助金とは?
「事業承継・引き継ぎ補助金」とは、中小企業者等が事業承継や事業再編・事業統合をきっかけとして新たな取り組みを行う事業における経費の一部を補助し、事業承継や事業再編・事業統合の促進を行うことで経済の活性化を図る、という点を目的とした取り組みです。
この事業承継・引き継ぎ補助金は、「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」に分かれています。この中で「経営革新事業」は経営革新などに取り組む中小企業等を類型に応じて支援するもので、「創業者支援型(Ⅰ型)」、「経営者交代型(Ⅱ型)」、「M&A型(Ⅲ型)」の3つの類型に分類されています(詳しい条件や補助上限額、補助額などについては公募要項をご確認ください)。
事業承継・引き継ぎ補助金(経営革新)の種類
創業支援型(Ⅰ型)
創業をきっかけとして引き継いだ経営資源を活用し、経営革新などに取り組む者を支援します。
経営者交代型(Ⅱ型)
親族内承継や従業員承継などの事業承継をきっかけとして経営革新などに取り組む者を支援します。
M&A型(Ⅲ型)
事業再編や事業統合などのM&Aをきっかけとして、経営革新などに取り組むものを支援します。
事業承継にかかる税金
相続・贈与にかかる税金
事業承継を行う場合には、相続または贈与にて自社株を引き継ぐことになり、税金がかかります。
相続による事業承継においては、自社株の引き継ぎで相続税が課税されることになります。この場合、各相続人の税額を求める場合には、いったん相続額の総額を計算した後で、それぞれの相続人の実際の相続割合をもとにして按分して求めていきます。
また、贈与による事業承継の場合には、自社株の引き継ぎ際して贈与税が課税されることになります。贈与税を課税する際には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2種類の課税方式がありますが、贈与者ごとに贈与税の申告時点でいずれかの方式を選択可能です。
株式譲渡にかかる税金
株式会社がM&Aにより第三者承継を行う場合には、すべての自社株を売却して買い手に対して経営権を譲渡します。このことから、M&Aによる事業承継を選択した場合には、一般的に株式譲渡の手法が行われています。
この場合、売り手側にかかる税金については、売り手の株主が「個人か法人か」といった部分によって課税される税金が異なってきます。例えば個人の場合には、譲渡所得に対して「所得税(15.315%)」「住民税(5%)」が課税されます。また、法人の場合には譲渡益に対して法人税などが課税されることになります。
買い手側には原則課税は行われませんが、無償など時価を著しく下回る金額で株式譲渡が行われた場合などについては買い手に対して贈与税や法人税が課税されるといった可能性もありますので、税理士とともに確認すると良いでしょう。
事業譲渡にかかる税金
一部のM&Aによる第三者承継の場合には、事業譲渡の手法が用いられるケースがあります。
事業譲渡による事業承継を行った場合、売り手企業には譲渡益に対して法人税などが課税されることになります(個人事業主の事業譲渡の場合には所得税が課税されます)。さらに、譲渡資産が課税資産の場合には消費税の課税も行われますが、土地や有価証券、各種債権を除いた資産は課税資産となるため、基本的に消費税は課税されるといえます。
また買い手側の場合には、基本的には売り手から預かった消費税を代わりに納税するのみとなりますが、取得資産に不動産が含まれる場合には、登録免許税や不動産取得税が課税されることになります。
事業承継税制のメリットデメリット
メリット
後継者が承継した自社株式に対し、贈与税や相続税の納税が猶予・免除される制度が「事後承認税制」と呼ばれる制度です。こちらの制度の利用によって、後継者は相続性や贈与税を納税するための資金が少なく済むまたは用意せずに済むことから、負担を軽減できるというメリットがあります。
贈与税や相続税の負担はかなり大きく、この点が後継者不足を招いている一因とも言われていますが、こちらの制度を利用すると後継者の負担を大幅に軽減できるため、後継者を選びやすくなる可能性も考えられます。
また、納税のための資金がある場合には事業への投資に回すといった対応も可能となり、事業承継を行った後の事業拡大も期待できるといったメリットも挙げられます。
デメリット
事業承継税制を利用するためには、まず手続きに手間がかかるという点がデメリットとして挙げられるでしょう。
申請の際にも多くの書類を準備する必要がある点に加え、適用された後も都道府県や税務署に対して年次報告・継続届出書などを提出する必要があります。もし報告を怠った場合や要件を満たさなくなった場合においては、納税猶予されていた贈与税や相続税の一括支払いを行うことになります。
また、事業承継税制は比較的新しい制度となっていることからも、対応可能な専門家が少ないという点もデメリットのひとつといえます。
まとめ
こちらの記事では、事業承継に関連する補助金や税制についてご説明してきました。これらの内容については非常に複雑な面もあるため、制度を利用したいもののどのように対応していったら良いかわからない、といったケースもあるかもしれません。
このような場合には、プロに相談することがおすすめです。制度の利用にあたって専門家と十分に話し合いを行い、自社にとってより良い方法を探していきましょう。