事業承継のメリットデメリット
そもそも事業承継とは
事業や会社の経営を後継者に引き継ぐことを「事業承継」と呼びます。この時に引き継がれるものとしては、経営権や財産の他にも経営理念や知的財産など、事業に関連するもの全てが対象となります。
事業承継の方法は、詳しくは5つの方法があります。以下でどのような方法があるのか、またそれぞれの方法についてメリットとデメリットを紹介していきます。
事業承継の方法
親族内承継
経営者の親族が事業を引き継ぐケースを親族内承継と呼びます。経営者の子どもが引き継ぐケースを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、兄弟姉妹や経営者の配偶者、兄弟姉妹の配偶者が引き継ぐといった場合もこの親族内承継に含まれています。
親族外承継
親族外承継は、その会社の役員や従業員などが会社を引き継ぐ方法を指しています。これまで経営者と一緒に事業を行ってきた役員や従業員が対象となるため、引き継ぎがしやすいとい方法といえるでしょう。
M&A
M&Aとは、他の企業や個人などの第三者に対して会社を売却することを指します。買い手側に経営権を譲渡して会社の経営を引き継いでもらう、という形になります。もし親族内や社内に引き継ぐ人材がいない、ふさわしい人材が見つからない、ということであればM&Aを選択するのもひとつの方法といえます。
廃業
事業承継ができない場合には、これまで継続した事業を廃止して会社をたたむことになりますが、これが「廃業」といわれる形です。また、会社を引き継ぐ先が見つからない状態で突然経営者が倒れてしまうなど、事業を継続できない状況になった場合にも廃業を選ばざるを得ない場合もあります。
株式上場
株式上場とは自社株式を証券市場で売買可能となる、ということです。数期に渡り経営状況が好況であり、株式上場が可能な企業であれば、このように非上場から上場企業に代わることによって後継者候補を多くの人材の中から探し出すことができるようになり、事業承継を進められるようになります。
それぞれの事業承継のメリットデメリット
親族内承継
メリット
親族内承継のメリットとしては、従業員や取引先の理解を得やすいために事業承継がスムーズに進むといった点や、準備期間を長く確保でき、時間をかけて後継者教育を行えるといった点が挙げられます。
デメリット
少子化などの影響もあるため会社を引き継ぐ子供や親族がいないといったケースが見られることや、個人保証を含めて後継者がリスクを引き継がなければならないという点、また経営者としての資質に不安が生じるといった場合があるといったデメリットがあります。
親族外承継
メリット
これまで事業に関わってきた人材が引き継ぐためにノウハウも豊富であり、事業承継を行った後も業務を円滑に進めていくことが可能となる点や、従業員の理解が得やすいといった点がメリットとして考えられます。
また、社風や経営戦略が大きく変わる可能性も低いといえます。
デメリット
親族外承継の場合、株式の買取資金などの面で後継者の負担が大きいといった点がまずデメリットとして挙げられます。また、株式譲渡の際に親族から反対される可能性も。さらに後継者を選ぶ場合にはしっかりと能力と人柄が優れている、そして従業員から信頼されている人物を選ぶことが必要となります。
M&A
メリット
M&Aの場合、広く後継者を探せるという点が大きなメリットであり、後継者不足に悩む中小企業にとって有効な方法といえるでしょう。また、資金力のある企業が買い手となる場合が多く見られるため、より強い事業基盤での事業成長が期待できるといった面もあります。
デメリット
M&Aを行う場合、自社を安心して任せられる買い手を探したり、買い手が見つかったとしてもその後の交渉が難しいといった点がデメリットとして挙げられます。M&Aを行った後も従業員や取引先との関係をそのまま継続してもらえるように交渉する、という点も非常に重要なポイントとなります。
廃業
メリット
廃業を選択するメリットは、経営者が会社経営から完全に引退できるといった点が挙げられます。事業承継を行った場合にはどうしても気になる、といったケースもあるため、廃業の選択により精神的な負担をなくせるようになります。
デメリット
廃業を選択した場合、事業が継続できないことから従業員を解雇しなければならず、再就職先の斡旋を行う必要が出てくるといった点や、取引先や顧客への説明責任が発生するといった点、さらに廃業後に個人保証のある負債が残ってしまうといったケースもあります。
株式上場
メリット
株式上場を行った場合には、人材が集まりやすくなる点が大きなメリットです。このことから、後継者候補の幅も広げられます。さらに、上場すると後継者が株式を買い取る必要がなくなるため、引き継ぐにあたって資金を用意する必要がなくなるといった点もメリットといえるでしょう。
デメリット
株式上場は簡単に行えるものではなく、経営状況が数期に渡り好況であることが前提となります。さらに、上場準備にあたっては大きなコストと労力が必要となるため、企業によっては事業承継を目的のひとつとして株式上場を検討する、という方法は現実的ではない場合もあります。
まとめ
こちらの記事では、事業承継の方法として「親族内承継」「親族外承継」「M&A」「廃業」「株式上場」を紹介してきました。それぞれの方法にメリット・デメリットがあるという点から、自社にはどの方法が合っているのかをよく検討して進めていく必要があります。
ただし、実際にはどういった方法を選択するべきか、またどう進めるべきかわからないといった企業もあるかもしれません。そのため、最終的にはプロに相談をし、十分に話し合いながら自社に合った方法を探していくと良いでしょう。