財務コンサルとM&A仲介の違い

M&Aを知るために大切なこと

後継者不在のために、M&Aによる外部承継を選択する企業は、増加傾向にあります。以前のように、会社を売却するのは恥だ、と考える風潮はなくなりつつあります。むしろ元気なうちに会社を売却して、まとまったお金を手に入れ、充実した余生を送ろう、と考える経営者が増えています。
多くの経営者は、自己利益の追求のみで会社を売却するわけではありません。売却後も残る従業員の待遇や、ブランド価値の維持などは、売却先選定の大きな理由になるでしょう。
また、M&Aには会社を丸ごと売却するわけではなく、不採算部門のみを切り離して、売却するケースもあります。ここでは事業承継にフォーカスして話を進めていきます。

M&Aとは

売り手側である現経営者にとって、第三者への事業譲渡が、すなわちM&Aとなります。M&Aの際に検討すべき内容としては、株式譲渡価格はもちろん、譲渡のタイミングや譲渡後の従業員や役員の待遇、商品・サービス・ブランドの引継ぎ、経営者の個人保証の解消などがあります。具体的な目途を事前に検討しておくことで、M&Aが成功する確率が高くなります。

M&A交渉の場面では、アピールポイントとなる側面(ブランド力、収益性、開発力、財政基盤など)と、弱みあるいは事業リスクとなる側面についても、正確に整理しておくことが必要です。自社の弱みをことさら表明する必要はない、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、事業内容(取引条件や流通など)や財務諸表を分析する過程で、企業の弱みを発見してしまう可能性が高いため、最初から正直に話したほうが、その後の対応がスムーズになります。

M&A仲介とは

企業同士のマッチング、つまりM&Aを成立させるために、売り手と買い手の間に立って中立的な立場で両者の間に立って交渉の仲介をする企業のことを指します。
売り手側には買い手企業の紹介を、買い手側には売り手企業の紹介をそれぞれ行い、M&Aの初期段階から成立までのトータルサポートを行っています。

M&Aの進め方

M&A交渉の実務では、財務や法務などの詳細な事項が争点となるため、弁護士や公認会計士、財務コンサルなどのエキスパートが登場し、専門家と連携しながら、契約内容を詰めていきます。第一回目の打ち合わせ時には、最低でも過去3年分の財務諸表や、取引先との契約書などを用意しておくべきでしょう。
また、M&A作業では、多数のステークホルダーが関与します。それぞれの打ち合わせの議事録や契約書類など、膨大なドキュメントが作成されます。仲介会社はそれらのマネジメントも手掛け、プロジェクトをスムーズに進めるための進行役となります。

M&A仲介の役割

M&A仲介会社の業務には、難しいポイントが存在します。たとえば、M&Aを成立させるには、買収対象企業の詳細な情報が必要です。しかし、買収対象企業は、情報開示に消極的であるケース(ネームアップすら拒絶する場合など)があり、情報収集に時間と労力がかかります。また、情報の真実性が担保されない場合があります。つまり信頼できる筋からの情報ではなく、単に市場の反応を見るための、いわゆる観測気球であったり、仲介料を節約するために、いったんM&Aを不成立させ、その後、仲介業者を介さずに直取引をする場合などです。

また、M&Aは、買い手と売り手の意向が、一致しなければ成立しません。しかし、買い手はできるだけ安く買収したいと考え、売り手はできるだけ高値で売却したいと考えますから、双方の思惑は対立するのが自然であり、すんなりと交渉が進むことは稀です。

M&A仲介会社は、買い手だけ、あるいは売り手だけの代理人をすることもあると同時に、買い手と売り手の双方のクライアントを抱えることがあります。この場合、売り手側と買い手側の間で、利益相反の問題が生じる可能性があります。例えば、仲介会社は、双方のクライアントから手数料を得ることができるため、いずれか側の利益を損なうような、取引を推進する可能性があります。また、仲介会社がM&A後の会社と取引を継続する場合、買い手側のクライアントに有利なディールを画策する誘因が生まれます。
このような利益相反を防ぐために、M&A仲介会社では対策を講じています。例えば、売り手と買い手のクライアントを別々のチームが担当することで、情報の漏洩や取引条件の不公平な扱いを防止するなどです。

財務コンサルとM&A仲介の違い

財務コンサルは事業継承を検討している会社に、財務ソリューションを提供し、報酬をもらうビジネスです。従って、基本的には依頼者の代理人となり、利益相反や、偏った取引が起こることは、ほぼないと考えられます。また、出口戦略は親族または社員への事業承継の場合が多いため、情報が外部に漏れる心配はありません。

M&A仲介会社に自社情報を渡した場合、何らかの事情で、競合他社や自分の会社の従業員に情報が漏れてしまう可能性は、ゼロではありません。さらにいったん売却情報が流れてしまった場合、回収するのは非常に困難です。

その点、財務コンサルは経営改善を目的として、財務内容の強化策を提案するのが仕事なので、守秘義務は確実に守られると考えてよいでしょう。また、会社と顧問契約をしている税理士や公認会計士は、おもに期末の決算作業にかかわっているため、財務コンサルと業務がバッティングする心配もありません。

編集チームより

財務コンサルとは、財務に関するサポートはもちろん、事業承継問題においても企業を総括的に捉え理解した上で、その企業の最適解を提供しています。企業にとって中長期的な戦略が期待できる存在こそ「財務コンサル」と言えます。
当メディアでは、会社を継がせるべきか、会社を継ぐべきか、経営者・後継者それぞれの抱える事業承継問題に対し、財務コンサル鹿島氏に取材協力を依頼。まだ決めきれない事業承継の第一歩、踏み出してみませんか。

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