【第1回対談:次期社長の本音を探る】リユース・リサイクル業界の事業承継問題

事業承継問題において、事業を継いだ方の声や継がせる方の声を直接聞く機会は少ないのではないでしょうか。

そこで当メディアでは、財務コンサルタント鹿島氏との対談形式による、事業承継インタビューを実現しました。

浜屋HP
引用元HP:株式会社浜屋公式サイト https://www.hamaya-corp.co.jp/

第一回目は、リユース・リサイクル業を展開する株式会社浜屋の次期社長、小林氏にお話を伺いました。

リユース・リサイクル事業を展開している浜屋は、1991年1月に設立して以来2023年1月で32年を迎え、北は北海道、南は福岡まで全国に17の店舗を展開しています。


株式会社浜屋
公式サイト

会社を継ぐきっかけとは

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最初はまったく継ぐ気はありませんでした

株式会社AIMM 財務コンサルタント 鹿島氏(以下、鹿島) 自己紹介をお願いいたします。

株式会社浜屋 取締役 小林氏(以下、小林) 株式会社浜屋の小林と申します。本日はよろしくお願いいたします。

私は2008年に父の会社に入社いたしました。それ以来、様々な部署での経験を積み重ね、現在は本社の営業統括部に所属しています。
現在は各店舗の統括業務として、店舗の管理や営業に関する業務を担当しています。

鹿島 自衛隊の経験を経て入社されたと伺いました。
最初は全く別の道に行かれていますが、いつかはお父様の会社を継ぐと考えていたのでしょうか?

小林 昔はまったく継ぐ気はありませんでした。
父からも「自分の好きなことをやるように」と言われていたので、大学を卒業してからおっしゃるとおり自衛隊に入隊したんです。
今振り返ると、長男としての漠然とした責任感は昔から感じていましたが、具体的に父の会社を継ぐことを考えたことはありませんでした。とくに20代の頃はそういう見られ方(=二代目社長と思われる見られ方)をしたくないという思いが強かったです。

継ぐことを意識し始めたのは、2017年から2018年ごろです。きっかけは…実は思い当たるものがこれといってあるわけではないんです(笑)。
具体的にいつから、というのはないのですが、徐々にその思いが芽生えてきた感じがします。

意識し始めてからは、仕事のやり方や見られ方についても、「二代目としてこうあるべき」というイメージが自分の中で形成されていったような気がします。

本当は継いでほしかったと言われたことも

鹿島 元々なにかきっかけがあったわけではないんですね。
小林さんが小さいころから、お父様は今の事業をされていたと思いますが、そういう姿を見て育っても特に意識はしていなかったですか?

小林 そうですね…そう言われると、うすうす感じたことはあったような気もしますが、顕在意識にはなっていませんでした。父からも言われたことがなかったですし。
でも面白いことに、継ぐと決めてから父とお酒の席で話しているときに「本当は継いでほしかった。誰かが会社を継がなければならないとは思っていた」と言われたことがあります。

鹿島 お父様の本心としては継いでほしかった、と。

小林 そうみたいです。
自衛隊を辞めて父の会社に入社するときも「自衛隊を辞めないほうがいいのでは?」と言っていたので、まさか本音で継いでほしいと思っていたとは、と思いました。

継ぐと決めてから意識したこと

理念となる軸の部分はぶらさずに吸収したい

鹿島 最初は継ぐ気もなかったとのことだけど、継ぐって自分で決めてから自分の中の変化はありました?

小林 父と向き合わないといけないなと思いました。どういう想いで会社を経営していて、経営において何を大切にしているのかという。
私が継いでも、そういった理念のような軸はぶらしてはいけないのでしっかりと吸収しようと意識しました。

意識してからというもの、今まで感じなかった父の偉大さというか、知れば知るほど遠い存在というか、そういうものを感じましたね。こんなに社員に慕われてて、人間的な魅力にあふれていて、自分とは全く違うパーソナリティだなと。
と同時に、会社を継ぐということに重みを感じるようになりました。

鹿島 そういうのはどのような瞬間に感じたのでしょうか?社員さんからの言葉とか?

小林 そうですね。今弊社では、「創業者の思い」というのを後世まで伝えていくプロジェクトを行っていて、社員に「心に残った社長の言葉」としてアンケートを取る機会があったんです。アンケート結果を見て、改めてすごいなと思ったのと、プレッシャーに感じたのと、自分はこうはなれないなと思ったのと。今、そういった感情が渦巻いています。

鹿島 具体的にどういう言葉があったのでしょうか?

小林 例えば、「身近に感じていて、親身になってくれる」「社員と常に同じ目線で接してくれる」という感想です。
社長の優れた人間力に関するエピソードをたくさんいただきました。アンケートは、すべての社員が提出してくれた点も、社長の力なのかなぁって。

鹿島 回収率100%はすごいですね!社長の求心力のおかげですね。

息子と部下、それぞれの立場から見た「父」「経営者」という存在の違い

家にいるときは普通の父でした(笑)

鹿島 では、「経営者と後継者」ではなく「親子」としてのお話をお聞かせください。
小林さんが息子として「父」を見ていて、「親父ってすごいな」って感じた経験ありますか?

小林 正直、昔はありません(笑)。家に帰ってくると普通の父なので。
ただ、今思えば、事業で大変な時期もあったのに家庭内では全然出さなかったんだなとは思います。いつも忙しかったので、その昔、ものすごく大きい携帯電話みたいなものを持って仕事の連絡を取ってるのは見てましたが、それがすごく大変そうだな~という雰囲気はなかったんです。
今自分が家庭を持つ立場になって、あの時の父は家庭内に仕事のストレスを持ち込まないようにしていたんだなと。それを知って、すごいなと思いました。

また、以前にその話を聞いたときに父が「仕事で大変なことはあったけど、つらいと思ったことはない」と話していて。なんで?と聞いたら、「自分が好きで始めたもので一生懸命やっているから、大変なことはあったけど辛いとは思わない」と断言していました。

親族内承継は会社を継続させるためのひとつの方法

鹿島 お父様のその姿勢、すばらしいですね。仕事のストレスを家に持ち帰らないようにしようと思ってるけど、つい出ちゃうなんて経験、あったりしますもんね。
例えば、将来的に会社を継ぐことに関して、小林さんが自分の家族に対して変わってきた気持ちはあります?

小林 父が常々言っていることなんですが、ゆくゆくは100年企業を目指したいと考えています。
その上で、自分の子供に継がせて家族経営するかどうか、というのは関係ないと思っていましたが、「会社を継続させる」ためのひとつの方法として家族で継いでいくという手段もありなのではないかと思うようになりました。もちろん、正解はこれだけだとは思っていませんが。
私はこれから会社を継ぐわけですが、100年企業にするためにしっかりバトンタッチをしていかないといけないなという思いがあります。そういう意味で、私もこれまで父が自分にしてきたように継いでほしいと直接いうことは無いと思いますが、いつかは継いでもらいたいという思いはあります。

鹿島 100年企業ってだいたい3代目で、4代目が見えてきたかなというときが多いですもんね。もしかしたら息子さん娘さんが継いだ時に見えてくるのかもしれないですね。

二代目としての今後のビジョン

物心両面の豊かさの追求

鹿島 これから二代目になるにあたり、意気込みをお聞かせください。

小林 父が今の会社を30年以上経営し、一代で大きくしてきたことを振り返ると、父の偉大さを実感します。今自分は、とにかく「父が育てた会社をよりよくしたい」という想いがあります。

また、これは父がよく言っていることなのですが、社員がそれぞれの個性を発揮してのびのび働けるよう、物心両面の豊かさを追求していかなければいけないなと思っています。自分自身の責任で、人生をかけて高みを目指していきたいと思っています。

社会に必要とされ続けるための経営理念

鹿島 お父様の積み上げてきたものを引き継ぐことで、「伝統と革新」なんて表現をしたりしますが、例えばお父様の作ってきた伝統を引き継ぎながら、二代目になって変えるもの、今の時流に合わせていくものは意識しているものでしょうか?

小林 おっしゃるとおり、意識しなければならないなと感じています。
弊社だと理念や社長の考え方、軸になる部分は変えないで大事にしていきつつ、それ以外は世の中の流れと一緒に変わっていかなければいけないなと思っています。社長は「常に今が創業なんだ」とよく言っているのですが、今の事業に捕らわれず、創業者精神を社員にも持ってもらって経営をしていくべきだなと感じています。

鹿島 まさに、イノベーションというか、そういう部分ですね。

小林 はい。これは非常に難しいところで、単なる新しいことにチャレンジし、あまりにいろんなことにチャレンジした結果、本業じゃないところに手を広げると、それはそれで難しいなぁと。
であればどうやって自社の強みを活かしつつ広げていけるか、が必要だなと感じています。

会社は潰れるときは潰れる、なんてこともあるかもしれませんが、そうは言ってもしっかり残していきたいと思っています。世の中に必要とされれば残っていくので、まずは、社会に必要とされ続けることが大事なので、そういう会社であり続けたいと思っています。

鹿島 そのあたりはお父様の思いを引き継いでいるのかもしれないですね。
本日は素晴らしいお話、ありがとうございました!

取材協力
財務コンサルタントに聞く
財務コンサルタント 鹿島 圭氏
財務コンサルタント 鹿島 圭
後継者だからこそできることの重要性

元々親御さんがやっている事業や会社には「伝統」があります。その伝統的な商品とかサービス、技術に対して、イノベーションを加えることで今の時流に合ったものになり、価値が変わるのではないか。私はそういう思いがあり、今のこの業務に従事しています。

まだ、親御さんの会社を継ぐか継がないかを決めかねている後継者様も、壁打ちすることで考えがまとまる方もいらっしゃいます。ぜひお気軽にご相談ください。

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