自分の代で事業をたたもうと思っている

経営理念には掲げられない事業の持続性

中小企業には、それぞれ経営理念があります。
会社経営をしてきた中で大切にしていることや、やってはいけないと考えていることなどを文字にしたもので、経営理念や社訓、経営哲学などと呼ばれます。創業者が筆書きしたものを額縁に入れて、社長室に飾っているのも、よく見かけます。

経営理念の多くは、社会の役に立つこと、世界に羽ばたくこと、従業員の心構え、などが掲げられています。これらは会社の事業を遂行する上での指針となるものです。ところがこの経営理念として「長期にわたって会社を持続させること」を目標に掲げている企業は、ほとんどありません。

つまり、経営理念が書かれた創業期や業績が良いタイミングにおいては、社長は事業継続性について重要視していないということなのでしょう。

事業承継が進まない理由

経営者の多くは、会社と従業員を家族のように大切に思っており、仕事も生涯現役で活躍したいと考えています。いずれは承継すると口では言う経営者も、実際に承継を考える段階になると後継者のアラばかりが目立ってしまい、承継が前に進まないものです。

また医学の進歩や、身体に気をつかう人が増えたことで健康寿命が延びているため、ギリギリまで事業承継を考えにくいという背景もあります。

ただ、人生には不測の事態も起こりえます。事業承継において大切なことは、経営者が元気なうちに、事業を承継することです。そのためにはまだまだ気分が若く、ヤル気のある経営者に引退するという覚悟を持ってもらうことが必要となります。

周りに迷惑をかけない廃業を

経営から身を引く段階で、廃業か事業承継かで悩む経営者は少なくないのではないでしょうか。後継者が決定しており、事業承継のステップを進んでいる場合は別ですが、後継者も見つかっておらず、さらに経営者の健康状態も芳しくない場合は、自分の代で事業をたたみ、会社の資産を分配する廃業も選択肢となるでしょう。

ただ同じ廃業でも、追い込まれての廃業よりは、できれば前向きで自発的な判断結果としての廃業を目指すべきです。そのためには取引先や従業員には早めに経営者の廃業意向を伝え、従業員が路頭に迷うことがないように、再雇用先を確保します。また、取引先にも迷惑をかけることがあるかもしれません。その取引先にとって自社がメインの納品先である場合、その取引先の事業継続も考慮すべきでしょう。

さらに当然のことながら、経営者の引退後の人生についても考え、経営者が経済的に安心して引退できるようにすることも、廃業においては大切なことです。

取材協力
経営コンサルタント 鹿島 圭氏
経営コンサルタント 鹿島 圭
後継者から「継がせてほしい」と言わせるために

経営者が今現在行っている事業には「伝統」があります。その伝統的な商品とかサービス、技術に対して、イノベーションを加えることで今の時流に合ったものになり、価値が変わるのではないか。私はそういう思いがあり、事業承継問題に取り組んでいます。

息子さん娘さんに会社を継がせたいと思っていても、気軽に相談する相手がいないという経営者様は多いのではないでしょうか。相談相手を見極め、相談内容を壁打ちすることで考えがまとまる方もいらっしゃいます。ぜひお気軽にご相談ください。

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