事業承継ガイドライン
事業承継ガイドラインとは
「事業承継ガイドライン」は、中小企業経営者の高齢化に伴い「中小企業の円滑な事業承継をサポート」するといった目的のもとで中小企業庁により2006年度に策定されています。その後、2016年度に改訂が行われました。
このガイドラインは、事業承継を行う上で計画的に準備をしていくことの重要性や、課題へどう対応していくのか、また事業承継を支援する体制強化の方向性などについてまとめられています。そのほかにも、後継者不足という課題を抱えている企業へ向けた情報についても記載されているといった内容になっています。
事業承継ガイドライン策定の背景
中小企業は日本企業の大部分を占めていることもあり、非常に大きな役割を持った存在であるといえます。
政府も中小企業の重要性について認識していることから、それらの企業が持っている貴重な技術やノウハウなどを次の世代に受け継げるようにさまざまな政策に取り組んでいますが、「事業承継ガイドライン」の策定も取り組みのひとつとなっています。
事業承継ガイドラインの概要
事業承継の重要性
事業承継ガイドラインの第1章の内容は「事業承継の重要性」を説明しています。 これまでは、親族が事業を受け継ぐのが一般的だったものの、少子高齢化が進んでいることや職業選択の自由が尊重されているようになってきているとともに、「先行きが見えない」という理由によって家業を継ぎたいと考える人が減っているといった状況にあります。
このような状況の中で現在は親族内承継が減少していますが、従業員承継やM&Aといった事業承継を選択するケースは増加しています。ただし事業承継を行うためにはある程度の時間を要することから、事業承継の計画を早めに立てて後継者を選定する必要があるといえます。
事業承継に向けた準備の進め方
ガイドラインの第2章では「事業承継に向けた準備の進め方」を説明しています。
事業承継を行うにあたっては、後継者の育成期間も含めた場合5年以上の長い期間が必要となるケースもあります。このことから、できるだけ早いうちに事業承継の準備を進めていくといった点が重要になってきます。事業承継ガイドラインの中では、「事業承継に向けた5つのステップ」について記載していますので、その内容を紹介します。
- 事業承継に向けた準備の必要性を認識する
- 経営状況・経営課題を把握する(見える化)
- 事業承継に向けた経営改善を行う(磨き上げ)
- 事業承継計画の策定またはM&Aマッチングを実施する
- 事業承継・M&Aを実行する
上記のステップに沿って事業承継の準備を進め、実行することがポイントとなってきます。
事業承継の類型ごとの課題と対応策
事業承継は「親族内承継」、「従業員承継」、「M&A」という3つの類型に分けられていますが、ガイドラインの第3章では、「それぞれの類型における実務上の課題と対策」について説明されています。
例として「親族内承継」を行う場合には、課題として「事業承継を行う場合の贈与税・相続税」といった点が挙げられています。後継者にとってはこれらが大きな負担となるケースも多くあります。また「従業員承継」を行う場合には、株式や事業用の資産取得に必要な資金をどう調達するかといった課題が挙げられます。
加えてM&Aを行う場合には、秘密保持を徹底して情報漏洩を防ぐといった点などが大切なポイントとなってきます。また、スムーズに事業承継を進めるためにも、経営の改善に力を入れるという点も重要です。
事業承継の円滑化に資する手法
ガイドラインの第4章では、「事業承継をスムーズに進めるための方法」について紹介されています。
事業承継においては、後継者への株式集約ができない、税負担が大きいといった課題が生じるケースがありますが、例えば「種類株式を活用する」「信託を活用する」「生命保険を活用する」といったように事業承継を円滑に進めるための手法を解説しています。
個人事業主の事業承継
ガイドラインの第5章では、「個人事業主の事業承継」についてのポイントについてまとめられています。
形式上は開業届や廃業届を出すのみ、ではあるものの人や資産の継承については書類を出すだけでは行えません。
例として、従業員や取引先についての対応などがありますが、これらの関係は信頼の上に成り立っていることから、経営者が変わった場合にはそのままの関係性を維持できるとは限りません。さらに、後継者の育成を行うためには時間をかける必要があるため、個人事業主の事業承継においても早めに準備をしていくことが必要といえます。
まとめ
こちらの記事では、中小企業庁によって策定されている「事業承継ガイドライン」について紹介してきました。事業承継を行う上で計画的に準備を行う重要性や、実際に行う上でのポイントなどがまとめられている内容となっていることから、事業承継を検討している場合にはぜひ目を通しておきたい内容といえます。
しかし、実際にガイドラインを読んだとしても「自社の場合はどう対応していけばいいかわからない」といったケースもあるかもしれません。そのため、事業承継を行う際にはプロに相談して十分に話し合い、自社にとってよりよい方法を探していくことがおすすめです。