事業承継の流れ

事業承継の必要性

事業承継とは、現在の経営者から後継者に対して会社の経営を引き継ぐことを指します。これは、事業を継続させていく上で必要なこととなっています。

この場合に後継者に引き継がれるものとしては、事業そのものはもちろんですが、株式や事業用の資産、取引先、従業員、特許権、商標権といったようにさまざまなものが含まれます。これらを円滑に承継し、発展させていくためにもしっかりと事業承継の流れを踏まえた上で対策をし、スムーズに進められるようにすることが大切といえるでしょう。

事業承継の大まかな流れ

事業の現状把握

事業承継を行うにあたっては、はじめに「事業の現状を把握する」という点が必要となってきます。この段階において確認する内容としては、「資産の状況」「株式の保有状況」「株式評価額」といった内容が考えられます。

まずは資産の状況を確認するためにも、財務諸表の確認から始めるのがおすすめといえます。

後継者選定

続いて、事業を引き継ぐ後継者の選定を行います。親族や社内に後継者としてふさわしい人物がいる、ということであれば当人に対して打診を行いましょう。事業承継を行う上では、親族内承継・親族外承継いずれの場合でも後継者との合意形成は非常に重要なポイントとなっており、合意がなければ事業承継を進められません。

後継者候補が複数いるといった場合には、それぞれの「経営者としての素質」についてしっかりと見極めてから決断をする必要があるといえるでしょう。本人に経営者としての素質がないと、今後の経営に深刻な影響が発生したり、周囲の反対が起こってしまう可能性もあります。

また、親族内や社内に後継者としてふさわしい人物がいない、候補となる人物が事業引き継ぐ意思を持っていないといった場合には、M&Aによる第三者への事業承継を検討していくことになります。この場合には、仲介者を通じた交渉を行うケースが多くみられます。

事業計画書作成

事業承継を行うにあたっては、事業計画書の作成も必要となります。しっかりと計画を立てた上で実行することにより、失敗の確率を低下させられるためです。

この場合に作成する事業計画書には、あらかじめ把握しておいた会社の現状についての内容や後継者候補について記載することがおすすめです。このことによって、後継者候補の人物に対してどのような教育を行っていけばいいのか、また教育を行う上ではどの程度の期間が必要となるのかといった把握が行えるようになります。

関係者への周知

事業承継を行うにあたっては選定した後継者について関係者への周知も必要です。周知については事業承継を行うことが確定した段階で実施します。

周知を行う際には、特に株式や事業用資産の相続権を持っている親族からの理解を得ておくことによって、スムーズな事業承継が期待できます。ここでしっかりと親族からの理解を得ておかないと、相続の不公平性に関して不満を持たれるなどで将来的にトラブルが発生する可能性もあるため、注意しておきたいポイントともいえます。

また、従業員に対しても後継者について周知させることは信頼や信用を高め、承継後の事業をスムーズに進めていくといった点につなげられるといった意味を持ちます。そのため、単に周知を行うだけではなく、経営権を移行する前から後継者に業務を引き継ぎつつ実績を作らせる、従業員の関係性を構築させるといったことが大切になります。

経営改善

事業承継を実施する前に、例えば財政状況を改善させる、社員のスキルを向上させるといったように自社の経営改善に取り組むこともポイントのひとつといえます。このように、自社を「磨き上げた状態」にした上で事業の引き継ぎを行えば、後継者のモチベーションを上げることにもつなげられるでしょう。

さらに、不要な資産については売却する、負債の削減を行うといった施策も考えられます。このような取り組みを行うことによって企業価値を高めておけば、M&Aを行う場合においても成功率を高められるといったメリットも期待できます。

引継ぎ

ここまで紹介してきた「事業の現状把握」、「後継者の選定」、「事業計画書の作成」、「関係者への周知」、「経営改善」といった流れを済ませた上で、計画書の内容に沿って事業の引き継ぎ作業を行っていきます。

法人において事業承継を行う場合には、経営者が持っている自社株式を後継者に対して譲渡し、経営権を承継します。株式を譲渡するには「相続」「贈与」「売買」の3種類の方法があります。

「相続」の場合には経営者が死亡した際、相続によって親族である後継者に株式が譲渡されるという流れとなるために、経営者自身や自身の死後に確実に株式譲渡が行われるように準備を行うことが求められます。「贈与」の場合は経営者から後継者に対して「生前贈与」の形で株式が譲渡されます。また、「売買」の場合には、後継者が株式を買い取るための資金を用意する必要がある点に注意が必要です。

以上のような形で経営権を譲渡し、事業の引き継ぎが行われることによって事業承継は完了となります。

まとめ

こちらの記事では、事業承継はなぜ必要なのかといった点に加え、どのような流れで進めていくのかについて解説してきました。事業承継をスムーズに行うためには、さまざまなポイントを押さえた上で準備・対策を行っていく必要があります。そのため、具体的にどのような準備を行っていけばよいかわからない、と不安になる経営者の方もいるでしょう。

以上から、事業承継を行う際にはプロに相談することがおすすめといえます。プロに相談することによって自社に合った方法によって事業承継を進めていけるはずです。

v